浮世の画家
物語の舞台は終戦から数年経った日本。 主人公は高名な初老の画家・小野益次(渡辺謙)。焼け跡から徐々に復興の姿を見せていく街で、広すぎる豪邸での隠居老人の一見平和な日常生活が描かれていく。ある日、長女・村上節子(広末涼子)が孫の一郎(寺田心)を連れて小野家にやって来る。 そんな中、次女・紀子(前田亜季)の見合いのことで、節子の口から思いもしないことが告げられる。「昨年、三宅家との縁談が急に打ち切られたのは、小野の過去のせいではないかと…」さらに今回の新しい縁談に向けて、何らかの手を打った方がいいと助言までされる。 「縁談が円滑に進まないのは、自らの過去に原因があるのではないか―」 戦争に加担した過去。同僚や師を裏切り、切り捨てた過去。語りたくない過去が確かにある。その事実を認識しながらも、強烈な自尊心が首をもたげる。自身の過去に何があったのか。 過去の記憶をたよりに、小野は昔の知り合いたちを訪ねていく。そこで周囲の自分への視線の変化に気づき始める…。